文学

お茶漬

久しぶりに永谷園のお茶漬けを食べた。一口啜りこんだ瞬間、突然ひとつの記憶が蘇った。

私が小学生のとき、学校の図書室に「マンガでわかる日本の歴史」という20巻くらいのシリーズ本があって、クラスに一人か二人必ずそれを完読している奴がいて、「歴史にやたら詳しい奴」として周りからリスペクトをこめた眼差しを受けていたものである。(たしか『マンガで分かる世界史』シリーズもあったと記憶している)

私はとてもじゃないが全巻通読できなかったが、最初から中世くらいまで(戦国時代まで)は読んだ。その戦国編で、かの織田信長が桶狭間の戦にのぞむ場面において、「お茶漬け(湯漬け)」がやけに効果的に使われていたことが、いま、お茶漬けを食べた瞬間に突如思い出されたのだ。

隣国の大大名・今川義元の軍が桶狭間(田楽狭間)あたりで昼休憩中、との一報を受けた信長は「この隙をのがしてはならない!」と、尋常ならざるスピードで出陣準備をはじめるのだが、脇にひかえる妻のお濃へ、
「お濃!湯漬け!」
と命じて、お椀で出された大盛りのお茶漬けを一気に掻きこみ、胃に収めるというシーンがあった。

それが小学高学年だった私には何故か強烈で、(やっぱり大事な合戦の前には、消化がよくて腹持ちもいい、お茶漬けのようなものを食べるのが相応しいんだなぁ…)と納得させられた。このマンガの僅かなワンシーンによって、消化のいい食べ物=お茶漬けと、私の脳に刷りこまれてしまったと言ってよい。

ちなみにその後のシーンも克明に覚えていて、湯漬けを食べた信長はおもむろに立ち上がり、扇子を手にして、
「人間五十年…下天の内をくらぶれば…」
で始まる、かの有名な”敦盛の舞”を舞ったのち、
「いざ、出陣!」
となるわけだが…。これはあくまでマンガであり、実際に桶狭間の戦いの直前、こんな舞を舞っている時間的余裕があったのかは大いに不明である。

話は変わるが先日、TikTok(ティックトック)をスマホで見ていた時に急に、ミュージシャン・俳優の福山雅治氏と、B’zのヴォーカルの稲葉浩志氏の対談動画が出てきて、私は自然とそれを最後まで見るかたちとなった。(TikTokは、ユーザーの過去の閲覧履歴をもとにして興味のありそうな動画を自動的に紹介してくるシステムとなっている)

その中で、やはりヴォーカリスト同士の対談ということもあって「ライブ前に必ず食べるもの」が話題となっていた。福山雅治氏はライブ本番前には必ず、生まれ故郷の長崎県の名産「五島うどん」を口にするそうである。「やっぱり米はダメ。本番中に胃に残っていて声が出づらくなる」と語っていた。
それに対し、稲葉浩志氏も「本番前はやはりうどんを食べるのが一番いい」と答えた上で、
「福山さんは毎回五島うどんじゃなければダメですか?たとえばツアー先の土地の名物のうどんとか…たとえば四国へ行ったら讃岐うどんを食べるとか…?」とたずねた。

すると福山雅治氏、独自のこだわりを見せ、
「僕は毎回五島うどんじゃなきゃいけないですね。これが突然その日だけ讃岐にしたりすると、やっぱり胃で消化しきるまでの時間が少し長くなって本番に影響してしまうので…」
とこたえ、その場の笑いを誘っていた。

やはり戦国時代も今も、勝負どころの前に食べるメシ…消化がよく、かつ腹持ちもいい最適なメニューとは何か?ということは永遠のテーマであるようだ。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です